富士山は木花咲耶姫と崇められるほどに滑らかで美しい山容を誇っていますが、活発に繰り返されてきた火山活動の影響により、山体は、溶岩が露出した斜面、砂や火山礫で覆われた小高い丘、深い沢などが連なる変化に富んだ複雑な地形をしています。その為、隣り合う場所でありながら全く異なる環境が生じ、動植物は、その場その場の環境に逞しく適応しながら多様性に富んだ富士山の生態系を形成してきました。私たちは富士山須山口登山道周辺を中心に保全活動を行ってきましたが、そこにはカラマツやブナなどの巨木の集団が小さな群落として点在しています。このような珍しい植生もこうした背景によるものです。

 戦中、戦後の天然林の伐採とウラジロモミによる造林は、生態系に大きな打撃を与えてきましたが、近年では、入山者による草木の踏み荒らし、盗掘による固有種の激減、寿命の時期を迎えたブナやスズタケの枯渇、鳥獣による食害の進行などが加わり、山麓のいたるところで自然環境の荒廃が急速に進んでいます。

 私たちは、こうした生物の多様性が衰退している現状に鑑み、本来あるべき富士山麓の自然環境を取り戻すため、これまで、地元の方々の協力を得ながら、環境破壊が進行した場所への侵入防止ロープの設置、注意喚起のための標識の設置、山道の整備、人工林の間伐、ゴミの回収、動植物の実態調査などに取り組むとともに、森林管理署、地元行政、議会などと意見交換を行なって参りました

 私たちは生物多様性の復元、子どもの健全教育、社会教育、町づくりの推進などに取り組みますが、これは非営利の活動であり、人々の理解と協力無くして実現することはできません。また、地域を超えた行政や関係団体との連携も不可欠です。私たちはこれまでの取り組みを地域に定着させるとともに、富士山全体にわたって展開し、この活動が子どもたちにふるさとの富士山を愛して誇りに思う心を育み、次世代に引き継がれてゆくことを目指して、ここに「NPO法人富士山ホシガラスの会」を設立いたします。