「ホシガラス」とは、高山の森に住んでいる野鳥の名前です。富士山の森にも住んでいます。大きさは35㎝ぐらいで、頭にはベレー帽、羽や尾羽のほかは濃いチョコレート色ですが、全身に白い斑点がたくさんあって、その模様が満天にきらめく星空に似ているところから、「ホシガラス」と素敵な名前が付けられました。
ホシガラスは、ハイマツやトウヒなど針葉樹の種を好んで食べますが、ブナやミズナラなどの実も大好きで、秋になるとエサの少ない冬に食べるため、土の中や木の洞など森のあちこちに木の実を隠して貯めておく習性をもっています。
面白いことに、ホシガラスに埋められたまま残った種が、やがて、芽を出して、ホシガラスの子孫たちのエサとなる実をつける木に育ち、自然の森づくりに役立っているのです。また、山が崩れて森が失われた所などにもホシガラスは木の実をたくさん埋めるので、森を再生する鳥としてもよく知られています。富士山の森にも、ホシガラスが埋めた種が育って成長したと思われる、幹周り6mを超すブナの巨木も見つかっています。森の木とホシガラスは、木の実のやり取りをとおして、互いの命をつなぎ子孫を残す森の自然環境をつくり、守っているのです
富士山の森林限界付近を歩くと、カラマツやシラビソに紛れて、ヒメコマツ(ゴヨウマツ)が点在しているのに気がつきます。過酷な環境の中で矮小化したヒメコマツはハイマツに似ているため、かつては「富士山にもハイマツがある」と勘違いされる方もいたと聞きます。おそらくはこれらもホシガラスがせっせと埋めて芽生えたものでしょう。御殿庭あたりではカラマツとシラビソが大きく育って環境が良くなったためか、今は人の身長を超えたヒメコマツもみられます。
この写真を撮影したとき、すぐ先の枝にホシガラスがいるのを確認しました。絶好のコラボレーションだったのですが、残念ながら撮り逃してしまいました。(2023.10)
地球の自然の中では、植物や動物の全ての生きものは、互いに支え合い関わり合いながら暮らしています。しかし近年、地球の生きものの種類や数が急速に減って、2万種以上の生きものが絶滅しかけています。私たちの営みが、生きものたちの住みやすい森や川、海の自然環境を汚し、せばめているからです。人も地球の生きものとして、自然の恵みを他の生きものたちから受けているのですから、生きものたちが住みやすい自然環境を、私たちが取り戻し、そして守ってあげなければなりません。
ホシガラスの会は、私たちのふるさとである富士山の森を学び、親しみ、そして守りながら、未来の子供たちに永く残していこうと、裾野市、御殿場市、小山町の市町民を中心に誰もが参加し活動できる会として立ち上がりました。そして、会の名前を、自然の森づくりの先輩であるホシガラスにちなんで、ホシガラスの会と名付けました。
ホシガラスの白い星の一つ一つは、ふるさとの森を愛する市民一人一人のしるしです。
富士山の森を守るために、ホシガラスの会の活動に参加して、羽ばたきましょう。
ホシガラスのイラストは伊東市の渡辺高助さんに作っていただきました。
ホシガラスの動画(鳴き声)
宝永遊歩道(標高2,400m)のカラマツの樹上でカチカチと音を出したり鳴いたりしています。
映像は標高1,200mあたりのブナ林で、ブナの種を採食しているところです。